アメリカ生活の質を左右すると言っても過言ではない「パン問題」。現地でのホームベーカリーの導入を迷っている方に向けて、実際に使ってみてわかったポイントを整理します。

生活環境やライフスタイル等により必要有無は異なりますが、個人的には買ってよかったと思っています!
なぜアメリカでホームベーカリーが重宝されるのか?
駐在準備当初、駐在帯同の先輩方によくお勧めいただいたのがホームベーカリーでした。一方で不要説もあり…。使いこなせるかわからない特殊用途家電をわざわざ購入することにも抵抗があり、本当に悩みました。そこでまずはなぜ、アメリカでホームベーカリーが重宝されるのかについて、考えてみたいと思います。
パンそのものの違い
アメリカで広く食べられるパンは、日本のものとは大きく違います。そのため、アメリカのパンが口に合わない場合や、日本のパンが恋しくなる可能性があります。そんな時、食べ慣れた日本のパンを自分で焼くことができれば、食生活がぐっと色づきます。もちろん手ごねせもできますが、ホームベーカリーがあれば気軽に自作のパンを焼くことができます。
アメリカで主役のパンたち
アメリカの食卓やカフェで日常的に登場するのは、主に以下の種類です。
1.食パン
アメリカの食パンは日本のもっちりふわふわの食パンとは似て非なるものです。
- 特徴: 日本のものより一回り小さく、薄い形状。水分量が少なく食感が軽い(悪く言えばパサついている)ものが多いです。また、言葉にはできない独特の風味があります。
- 食べ方: カリカリにトーストしてバターやジャムを塗る食べ方、または、サンドウィッチが一般的です。
2. ベーグル
ニューヨークを中心に、アメリカ全土で最もメジャーなパンの一つです。
- 特徴: 日本のものより一回り大きく、ずっしりと重厚。プレーンだけでなく、エブリシング(胡麻やガーリックなどのトッピング全部のせ)、シナモンレーズン、ブルーベリーなどが定番です。
- 食べ方: 横半分にスライスしてトーストし、たっぷりのクリームチーズを塗るのが王道です。
3. サワードウ (Sourdough)
特にサンフランシスコなど西海岸で愛されている、天然酵母を使った酸味のあるパンです。見た目はフランスパンに似ていますが、風味は全全く異なります。正直食べ慣れない味で、私は得意ではありません。
- 特徴: 外側はガリッと硬く、中はもっちり。独特の酸っぱさがあります。
- 食べ方:スープに浸したり、サンドイッチ(アボカドトーストなど)に使われます。
4. クロワッサン
フランス発祥ですが、アメリカでも朝食の定番です。
- 特徴: 日本のものより巨大なサイズが多く、サンドイッチの「バンズ」として使われることも一般的。ハムやチーズを挟んだ「クロワッサン・サンド」はカフェの定番メニューです。
5. マフィン 等の甘い焼き菓子系パン
パン売り場の隣に必ずあるのが、甘い焼き菓子系のパンです。甘さたっぷり、油分たっぷりです。
- 特徴: アメリカのマフィンは拳二つ分くらいあるビッグサイズ。ブルーベリー、チョコチップ、バナナナッツなどが主流です。そのほか、ドーナツ、シナモンロール等も一般的です。
経済性と物理的距離によるベーカリー難民化からの解放
実はアメリカのWhole Foods Market等では「Japanese Milk Bread」と呼ばれる日本風の食パンを手に入れることができます(そうは言っても日本のパンとは異なりますが…)。また、日本食スーパーや韓国、台湾系のベーカリーなどでは食パンの他、クリームパンやあんパン、ソーセージドッグ等なじみ深いパンを購入できます。ただし、食パンは5~7ドル程度、クリームパンやあんパンは2~3ドル程度。気軽に手が出せる価格ではありません。また、広いアメリカでは、日系スーパーや美味しいパン屋まで車で1時間以上かかる地域も多いです。
- コストパフォーマンス: アメリカのスーパーで強力粉やバター等パンの材料を安く調達できます。もちろんホームベーカリーの購入費用はそれなりにかかりますが、1回あたりの材料費を劇的に抑えられ、気軽においしいパンを毎日の食生活に取り入れることができるようになります。アメリカでは、「高いから買うのを諦める」ということが多く小さなストレスの種になります。とりわけ、日本にいれば気軽に買えたものが買えないということは、なかなかのストレスです。それが解消されるのは、意外と大きな意味を持ちます。
- アクセスの問題: ホームベーカリーの良さは、材料があればいつでも、おいしいパンを焼けること。ホームベーカリーは、お店までの距離という物理的な距離を解決する手段になります。
保存料や添加物への不安の解消
アメリカの市販のパンの裏面を見ると、驚くほど多くの原材料が記載されていることがあります。
- 保存料と添加物: 現地のパンは賞味期限が驚くほど長いものもあり、成分表を見ると聞き慣れない添加物が並んでいることも。また、英語を読み解くのも一苦労です。自分で焼けば、小麦粉、バター、砂糖などシンプルな材料だけで作れるので安心です。
- カスタマイズ性: 「砂糖を控えめにする」「バターの代わりにオリーブオイルを使う」「ナッツやシードを混ぜる」といった調整が自在にできるのは、自炊文化が根強い駐在生活において大きなメリットです。
パンを焼くという充実した時間の獲得
駐在の帯同としてアメリカに移る場合、日本での生活よりもアメリカでの生活のほうが時間的な余裕がある方も多いと思います。パンを作るという生産的で能動的な作業は、新しい趣味として日々の楽しみの一つになりえます。パン作り中は時間を忘れて無心にもなれます。おいしいパンを食べられる喜びはもちろん、パン作りが上達する喜び、家族がおいしそうに食べてくれる喜びもまた格別です。焼き立てのパンの香りに包まれる時間は、癒しの時間でもあります。
ホームベーカリーの入手方法
アメリカでホームベーカリーを使用するには、主に2つのパターンがあります。
1. 日本から持参する方法(おすすめ)
おすすめはパナソニックのホームベーカリー。パナソニックは、日本において圧倒的なシェアとレシピの豊富さを誇ります。確かな技術で初心者でも簡単においしいパンを焼くことができます。
- 「おまかせ」で失敗しない初心者向けの設計 パナソニックの最大の特徴は、その技術の高さ。室温や湿度をセンサーで検知し、最適なタイミングでイーストを投入してくれる等の機能が搭載されており、パン作りが初めての方でも失敗が非常に少ないです。
- 圧倒的な日本語レシピとメニュー数 機種ごとに多くのレシピを公開しており、初心者でも簡単に始められるのがパナソニック社の製品の魅力です。機種によりますが「乃が美」監修の「おうち乃が美」レシピなど、日本人の大好きなふわふわ食パンに特化したメニューも豊富。さらに、うどん・パスタ生地、甘酒、餅など、アメリカの日本食スーパーでは高価なものを自作できるメニューが充実しています。
- 日本語の安心感 操作パネルが日本語であることは、慣れない海外生活での心理的ハードルを下げてくれます。
【▲注意点:変圧器が必須】
日本のパナソニック製品は100V仕様です。アメリカの120Vでそのまま使うと、ヒーターが過熱して故障したり、パンが焦げたりするリスクがあります。1000W〜1500W程度の容量がある大型の変圧器(アップダウントランス)を日本から、あるいはアメリカで調達する必要があります。
私が使用しているのはこちらのホームベーカリーです。
お餅やうどん、フランスパンの作れる機種をご希望の場合はこちらがおすすめです。こちらもスタイリッシュでとても素敵です。
変圧器はカシムラ製がおすすめです。
2. アメリカで購入する方法
アメリカのアマゾンや現地のキッチン用品店でもホームベーカリー(Home Baker)は気軽に手に入ります。
- アメリカの電圧(120V)に完全対応 変圧器が不要で、コンセントに直接挿して使えます。キッチン周りをスッキリさせたい場合は大きなメリットです。また、故障の際もアメリカでサポートを受けられるのもうれしいポイントです。
- アメリカの「強力粉」に最適化されている アメリカの強力粉(Bread Flour)は日本のものよりタンパク質含有量が多く、性質が異なります。現地モデルの象印は、現地の粉を使って美味しく焼けるようにプログラムが調整されています。
- 象印製北米仕様のホームベーカリーが人気です。


パン作り初心者が実際に焼いてみた
食パン(画像は抹茶入り)やお惣菜パンも、簡単に作れます。お惣菜パン(画像右)も成形パンデビューして2回目のもの。不格好ではありますが、初心者でも簡単に作ることができることがお分かりいただけると思います。


定番のクリームパン(画像左)は初めて成形パンにチャレンジした時のもの。少しずつ上達して、最近は白パン生クリームパン(画像右)等ド定番以外のものにもチャレンジできる余裕が生まれてきました。


どんな人に、ホームベーカリーがおすすめか
1. 日本のパンが好きな人
アメリカのスーパーで買えるパンは、前述の通り日本でなじみ深いものとは大きく異なります。
朝食は「厚切りトースト」派の人、あるいは生食パンのような「しっとり・ふわふわ・甘め」の食感を愛している人。あんパンやクリームパン等、日本のパンが好きな人にはおすすめです。
2.日本食スーパーやアジア系ベーカリーが帯同先にない方
日本風のパンが気軽に手に入る場合と、そもそも近くにお店がない場合では、ホームベーカリーの必要度が大きく異なります。気軽に手に入る距離にあれば、必ずしも必要ではないかもしれません。
3. 小さなお子さまがいるご家庭
アメリカの市販パンは、驚くほど賞味期限が長いものがあり、保存料や添加物が気になることも。お子さまに安心・安全なものを食べさせたい親御さまにはおすすめです。また、アメリカの硬いパンの耳を嫌がる子でも、焼きたての柔らかい耳なら喜んで食べてくれるという「駐在あるある」があります。
4. おもてなしや持ち寄りの機会が多い人
駐在生活では、同僚や友人とのホームパーティーが頻繁にある場合も。何をふるまうか、何を持っていくか悩むこともあるはず。そんな時に「日本風のパン」のカードを持っていると安心です。
5. 節約と贅沢を両立させたい人
アメリカの外食費やデリ価格は高騰しています。また、日本風のパンも気軽に買える価格ではないことも多いです。そこで、食費は抑えたいけれど、食べる楽しみは妥協したくないという人におすすめです。高いパンを買わなくても、おいしいパンを作ることができます。また、機種によりますが、ピザ生地、うどん、パスタ、お餅など、HBは「生地作りマシン」としても優秀です。週末に家族で手作りピザパーティーをしたり、手打ちうどんを楽しんだりすることで、外食費を浮かせつつエンターテインメント性を高められます。
6. 駐在帯同に伴い時間に余裕ができる人
帯同者としてアメリカについていく場合、日本での生活に比べて時間に余裕が生まれやすいです。また、慣れない異国の地では、言葉の壁や文化の違いに戸惑い、どうしても受動的、消極的になりがちです。自分は何もしてない、何もできていない、と自分を責めてしまう時もあるかもしれません。そんな時、パン作りという能動的で生産性のある趣味が自己肯定感を高めてくれる可能性があります。パンを作っている時間は、無心になれる、いわばマインドフルネスな時間です。パン作り上達の喜びや、小さな達成感は、駐在帯同生活に彩りをもたらしてくれるかもしれません。

パンにこだわりがない方、料理やお菓子作りに抵抗がある方、どんなものでも買った方が楽というタイプの方には、向かないかもしれません。
まとめ
ホームベーカリーの導入は、駐在生活を豊かにする「投資」としてアリだと私は考えます。料理をすることに抵抗がないことが大前提(食パンを焼くだけなら料理が苦手でも問題ありません)ではありますが、日本のパンが好きなら、導入して損はないと思います。特にお子さまがいるご家庭や、日本の食生活を大切にしたい方にとって、ホームベーカリーは単なる家電以上の心の安定剤になってくれると思います。




